- 不動産ドットコムTOP
- 不動産ドットコム ニュース
- 「こんな不動産は要らない!」お困り相続物件を処分できる?
2026.1.27
「こんな不動産は要らない!」お困り相続物件を処分できる?
■相続人が頭を抱える「お困り相続物件」の悩み
高度成長期に子ども時代を過ごした年代が「相続人」の立場を迎える今、「お困り相続物件」が相続手続きを一層面倒にしている状況が起きています。親が善かれと思って遺した財産が、かえって子や孫を苦しめるケースが増加しているのです。
相続財産の中でも優等生扱いされてきた不動産。確定申告の際に、現金や有価証券と比べると課税評価額が低く抑えられることから、「財産を残すなら不動産で」という風潮が長く続いてきました。しかし、社会の変化で、この流れが変わりつつあります。
相続人が「こんな物件要らない!」と思うのは、どのような不動産なのか?そんな物件を相続することなく、合理的に処理する方法はないのか?詳しく見ていきます。
「お困り物件になる不動産とは」
お困り物件とは実際にどのような問題を抱えているのか?相談事例を見ていきましょう。
・亡くなった母方の祖父から、母の実家だった人里離れた山の中の一軒家を遺された
・他に身寄りのない従弟が亡くなり、広大な農地や山林を相続する立場になって困っている
・投資用マンションだと聞いていたら、実際は空き室だらけでローンまで残っていた
・全く使っていないバブル時代の別荘で、水回りの配管が壊れて雨漏りもあることが相続してから判明
見ただけで「えっ!?これ・・・?」と戸惑う気持ちがお分かりいただけると思います。譲るというより、厄介ごとを押しつけられる印象さえあります。なぜ、このようなことが起こってしまうのか?背景は、社会情勢の変化による、不動産の価値や扱われ方の様変わりにあるようです。
「昔財産、今負担??不動産のありがたみが目減りしている」
ひと昔前、特に地方都市では田畑家屋敷は生計を立て、住まいを確保する意味でマストアイテムでした。けれども、サラリーマン社会になって都会を生活拠点とする人が急増し、地方の過疎化が進んだ今、人々の不動産に関する認識は大幅に変化しています。
少子化による人口減少で空家は急増、高度成長時代とライフスタイルも変わり、人々の住まいの在り方、求められるものも変化しました。以前なら「どこに買う/建てる」が重要だった住まい選びは「どこに住む」「どんな風に住む」となり、必ずしも一軒家を所有することが良いこととは思われなくなっています。
統計的にもこうした傾向は明確で、平成29年に行われた国土交通省の調査によると、土地を保有することに「負担を感じたことがある/感じると思う」と回答した人が回答者全体の4割強、既に土地を所有している回答者でも38.9%の人が負担を感じているという結果になりました。
空き地の所有者になると更に多くの47.4%の人が負担だと答えており、売却処分がしやすいはずの宅地の所有者となると、なんとほぼ半数に。しかも、これらの空き地を取得した原因の第一位が「相続」でした。(国土交通省:平成30年版土地白書|国民の土地に関する意識についての調査 より抜粋)
更地になった宅地は固定資産税が高くなります。欲しくて買ったわけでもなく、使う目的もない物件では負担感が重くなるのは無理もないことでしょう。
「お困り物件を国にバトンタッチできる新制度がスタート!」
少子化の現代は、親の突然の死去で有無を言わさず不動産の相続人にならざるを得ないリスクが大きくなっています。こんなお困り物件の相続人になってしまった時、合理的に片付けてしまう方法が欲しい!と思う人は少なくないでしょう。そこで国は2023年4月27日から、「相続土地国庫帰属制度」をスタートさせることになっています。この制度では、土地を相続した人が、一定条件に当てはまる場合に限り、利用する予定のない使わない土地を国に引き取ってもらうことができるようになるのです。
なぜ、この制度をスタートさせることになったのか?その背景には、日本じゅうで増加している「所有者不明土地」があります。2016年時点の調査によれば、全国の所有者不明土地の総面積は410ha。なんと、九州の総面積(367.5ha)を上回る面積になっています。(所有者不明土地研究会調べ)。この状況が続けば、2040年には本州の2割程度、北海道の面積相当にあたる720haに到達する恐れがある、との指摘もあるのです。
既に、各地で自然災害を契機に、管理する人が居なくなった土地の崩落事故災害も起きており 、また、地方自治体の税収の減少にもなる状況に、国は早急に対策を講じる必要に迫られたと考えられます。
使うあてもない、予想だにしていない土地を押し付けられるように相続することになったものの、その負担を支えきれず、管理はおろか、所有権移転登記も放置される・・・これが積りに積もった結果、所有者不明土地は深刻な社会問題となっているのです。
「相続土地国庫帰属制度の利用に費用はかかるのか?」
打開策の期待が持たれるこの制度を詳しくみてみましょう。まず、申請ができる不動産は、土地に限られ、建物等は対象外です。申請者になれる人は土地を相続、または、故人から遺言等で取得した人(遺贈による受贈者)限定です。相続人が複数で一つの土地を所有する(共有)の場合は、共有者全員で申請しなければなりません。
申請後は要件審査に適合するかを調査するため、書類審査だけでなく担当者の現地調査もあると思われます。申請の窓口は法務局か、地方法務局となる予定です。
制度の利用は残念ながら無料ではないようです。申請そのものにかかる申請手数料のほかに、地目や面積、物件周囲の環境などから算定される「管理費10年分相当」の事前納付が求められます。「申請すれば無料で国がもらってくれる!」ということになれば、土地相続のルールが崩壊しかねません。所有者が担うべき土地の管理負担を国におっつけてしまえばいい、といった風潮が広まってしまうと本末転倒ですから、相応の金銭的負担は仕方ない、というところでしょう。
承認されやすい審査の要件の内容については、まだ不明な点も多いですが、
①建物がない
②所有権以外の権利(例:抵当権、地上権など)がついていない
③所有者以外が利用する予定がない
④土壌汚染がない
⑤境界点が明確で境界画定ができている
などが必要条件になっています。
審査をパスできず承認が下りない条件もあり、
①崖などの急傾斜地
②土地の管理や処分が困難になるような工作物の遺留
③埋設物がある土地
④訴訟が必要になるような重大な問題を抱えている(例:隣地所有者との境界争い)
⑤管理、売却処分のために膨大な費用や労力を必要とする事情がある
このような土地は、国としても願い下げ、ということになるようです。
「納入する管理費はいくら?2024年からの相続登記義務化を見越した判断も」
10年分の管理費と言われると、高額なんじゃないか?と気がかりですよね。まだ、算出基準や方法は不明なため、今後の発表が待たれるところです。ただ、国有地の管理費の事例を見ると、10年間分で宅地なら80万円、原野では20万円くらいですから、払いきれないほど高額になる心配は少なそうです。制度の利用は、新制度開始以前である2023年4月26日までに相続した土地も対象になります。つまり「前に相続したけれど使い道のない土地」も国が引き取ってくれる可能性があるのです。
注意点として、申請・審査を無事に通過するのは「狭き門」にはなりそうです。特に、先祖伝来の宅地や、農地や山林などは、しばしば、登記が国土調査のみで何世代も所有権保存がされておらず、所有者が多人数に及んでいたり、境界標がなく確定測量さえ困難だったり、道がない土地の通行権等の所有権以外の権利が設定されていたり、と、普通の売買でも一筋縄ではいかない物件が少なくないからです。
都会の一等地であっても、森友学園問題の土地にも見られるような「埋設物」の問題、古家が残っていて解体が必要になるケース、工場跡地などでは土壌汚染の心配もあります。これらの処理にかかる費用の方が、申請時に払う10年分の管理費より高額になる可能性も無いとは言えません。そうなると「安価に買い叩かれてもいいから、誰か買い手を見つけた方がマシ!」という場合もあるでしょう。
国は平成24年4月から不動産相続時の登記の義務化を一層厳しく徹底することを定めています。併せて、これ以前に相続済みの物件も、今後3年以内に登記を完了することを義務付けて、違反者には罰則の10万円以下の過料を課すという厳しい姿勢を見せています。国としては、社会問題化する「所有者不明物件」を、相続登記の徹底と言う厳しい顔と、相続土地国庫貴族制度という優しい顔を使い分けて解決しよう、という考えの現れなのかもしれません。